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by KK

板橋文夫オーケストラ@横濱ジャズプロムナード2008

「ソロ&ミックス・ダイナマイト・トリオ+1」のステージ終了後も関内大ホールに留まり、「板橋文夫オーケストラ」の開演を待つのは、昨年と同じ。


しかし今年は、インターバル30分の間、九州から板橋さんの演奏を聴きにいらしたのほほんさんと初対面を果たし、しばしロビーでジャズ談義。
のほほんさん、穏やかな語り口が実に印象的な方。かれこれ30年近く板橋さんの演奏に魅せられて来た者同士、初の対面にもかかわらず話題尽きず。

数年前、当時板橋さんのサイトに設けられていた掲示板で、ファンがディスコグラフィーを作成する気運が生まれた時期、私には珍しく、積極的にデータを書き込んでいたことがあったのだが、その時使っていたハンドルを申し上げたところ、ああ、●●さんでしたかと覚えていて下さって、嬉しかった。

残念ながら夜にご予定があるとのことで、終演後に一杯というわけにはいかなかったが、ぜひこちらにお出向きの際は、よろしくお願いしますね!>のほほんさん

*

板橋文夫オーケストラの演奏、19時スタート。

舞台に向かって前列左から、太田恵資(vln)、板橋文夫(p)、村井祐児(cl)、林栄一(as)、片山広明(ts)、中秀仁(b.cl)、田村夏樹(tp)、福村博(tb)と並び、少し下がった位置に井野信義(b)、小山彰太(ds)、外山明(per)。

観るのも聴くのも初めてで少々うろたえた昨年と違って、このオーケストラの「流儀」といったものを知った今年のステージ、昨年披露された曲が何曲も演奏されたこともあり、私は終始落ち着いた気分で、彼らの熱演を受けとめることができたように思う。
相変わらず板橋さんはエネルギッシュで、メンバーたちと作り出す音楽は、聴き手の血を熱くさせる。
それをいっそう煽るのが、言わずとしれた板橋さんの演奏スタイルで、ことにバイオリンの太田さんと丁丁発止と渡り合ったパートがあったが、私、知らず知らずのうちに掌にじっとり汗をかいていて、曲が終わったあとの拍手の際、手を叩いても音が出なかった…こんなことは初めて、だった。
新曲では「サイクリング・ブルース」「ピンク・ロック」が印象に残る。特に前者は親しみやすいテーマ、聴いたばかりだというのに、すぐに覚えることができ、嬉しかったものである。

終演20時45分。
時間の関係上アンコールが聴けなかったことが残念だったものの、精神に入念なマッサージを受けたような心地良さ、しばらく継続。
関内駅へ急ぐ途中の夜の冷気が、気持ちよかった。

*

あの夜から、2週間経った。
たびたび、板橋文夫オーケストラの初の吹き込みとなる『WE 11(ウィ・イレブン)』を聴き返しては、12日のステージのことを思い出し、どう当blogに書こうかと考えてきたが、ようやく書き上げることができそうで、ホッとしている。


ただ、ひとつ最後に記しておきたいことがある。
このオーケストラ、さまざまな楽しみ方ができる、優れた創造集団であることは疑いない。
しかし、どんな卓越したグループであれ、年を経るごとに斬新さは失われ、マンネリに陥ることは避けられないことで、作曲の才に恵まれた板橋さんが、次から次へと素晴らしいオリジナルを書き上げたとしても、常に新鮮なパフォーマンスを披露することができるとは限らないと私は思っている。

かすかに感じた不満を書くと、どんな曲も、途中から同じ調子になっているような気がする。
これは、かつて70年代の山下洋輔トリオの演奏を聴いて感じた不満と非常に似ている。「一本調子」と言ったら語弊があるが…

たとえば私は、「ピンク・ロック」のような曲のあとに、しっとりとしたバラードを聴きたい。それも多彩なホーンひとりひとり、そしてピアノとバイオリンが、じっくり聴かせるようなバラードを、である。こういう演奏を一曲ぐらい入れたとしても、板橋オーケストラの価値が下がるわけではないと思うし、聞き手も歓迎だと思うがどうだろう。

そういえば、今年は「フォー・ユー」を聴くことができなかった。
それゆえ、心残りから、上記のように感じたのかもしれない。
by kreis_kraft | 2008-10-26 20:47 | ジャズ